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【発酵食品って加熱OK?】乳酸菌は死んでも役に立つ?管理栄養士が徹底解説│ケフラン

2021.11.15
乳酸菌は死菌でも効果がある

体に良いイメージのある乳酸菌。でも、菌と名のつくだけあって、加熱することで死んでしまうこともあるらしい・・・!?死んでしまった乳酸菌は効果がないのでしょうか、管理栄養士が徹底解説します。

乳酸菌は死菌でも効果がある?

乳酸菌

乳酸菌は生菌(プロバイオティクス)が腸管内に留まり、腸内細菌叢に作用することで腸内環境を整えたり、免疫機能を調整する働きがあると注目されてきました。しかし、最近では生菌ではなく「死菌」であっても腸内環境を整えたり、代謝調節などの有効性があることが明らかになってきています。

1998年に東京大学の光岡知足名誉教授が、殺菌された乳酸菌や乳酸菌の菌体成分、代謝産物などの死菌を「バイオジェニクス」と提唱しました。直接、もしくは腸内フローラを介して腸に働きかけ、整腸作用や免疫調整作用、抗腫瘍作用、コレステロール低下作用、血圧降下作用などの働きをもつ食品成分のことをバイオジェニクスといいます。

生きた乳酸菌が生きたまま腸に届き定着することは困難といわれていますが、バイオジェニクスのような死菌でも有効性があることが明らかになったいま、乳酸菌の可能性がさらに広がりつつあります。

では、乳酸菌はどのような条件で死んでしまうのでしょうか。

乳酸菌はどんなシーンで死んでしまう?

加熱によって

熱に弱い特徴がある乳酸菌は、調理や加工段階などでの加熱で死滅してしまいます。乳酸菌サプリメントも粉末にする際に、加熱殺菌をしてから凍結乾燥の工程を経るため、死滅している乳酸菌であることが多いです。

乳酸菌が死滅する温度や時間は種類によって異なります。死滅温度は50~65度、加熱時間は5~10分ほどで死滅するため、生菌を摂りたい場合は、加熱調理はなるべく低い温度かつ短時間で済ませるようにするとよいでしょう。

胃酸や胆汁酸によって

乳酸菌は胃酸や胆汁酸で死滅します。しかし、種類によっては耐酸性があり死なない乳酸菌も存在するため、すべての乳酸菌が胃酸や胆汁酸で死滅するわけではありません。

胃酸や胆汁酸の酸に耐性のある乳酸菌は生きたまま腸に届き、乳酸を作ることで善玉菌が増殖しやすい環境にしてくれます。乳酸菌は生菌・死菌ともに腸内環境を整える働きや、免疫調整作用があるため、生菌だけにこだわる必要性はありません。

死菌のメリットは?

死菌のメリット

生菌も死菌も効果があるのであれば、わざわざ殺菌して死菌にする必要はないのでは?と思う方も多いでしょう。実は、死菌を用いることで食品の風味を保つことができたり、常温で流通させることが可能になったりと、さまざまなメリットがあるんです。

生菌を用いたヨーグルトやキムチなどの食品は、時間が経つにつれて酸が発生し、味や風味が落ちてしまいます。よって生菌を使った食品は、ベストなおいしさを長期間保つことが難しくなります。その代わりに死菌を用いることで、酸を産生することがなく、生菌であれば効果がある乳酸菌が体内で死んでしまうということもありません。味や香りを保つことはもちろん、常温で流通しても品質が落ちにくく、保管にも優れているというメリットがあるため、食品や飲料では死菌を使用している商品も多いのです。

まとめ

乳酸菌は生菌にこだわって摂る必要はなく、死菌でも整腸作用や免疫調整作用、コレステロール低下作用など、私たちの健康を維持するために役立ちます。

乳酸菌は生菌であれ死菌であれ、コツコツと摂取することが大切です。ヨーグルトやキムチ、乳酸菌飲料、サプリメントなどと乳酸菌を摂る方法はさまざまあるので、ライフスタイルに適したものを選び摂取するように心がけてみてくださいね。

管理栄養士プロフィール:石川桃子

管理栄養士×健康食品ライター。

歯科医院で管理栄養士として予防医療に携わり、現在は歯科医院でのパーソナル食事・栄養指導に加え、セミナー講師、ライター(健康食品やヘルスケア分野など)をメインにフリーランスとして活動しております。
Instagram:https://www.instagram.com/mmk_rd/

参考URL

プロバイオティクスの歴史と進化 光岡知足
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jslab/22/1/22_26/_pdf

乳酸菌の死滅温度に及ぼす酒精及び乳酸の影響(第1報)分離菌の諸性質 工藤仁助,米山平,塚 原寅次
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1915/51/2/51_2_107/_pdf/-char/ja

耐酸性を有する乳酸菌の検索 磯部由香, 松井宏樹, 安見真帆, 成田美代
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej/58/6/58_6_337/_pdf

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